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刺草の雑記帳

好きなもののことを書き留めるブログ。刺す草と書いて「いらくさ」。

魚に似た生き物の話

エイプリルフール2014

 

ある春の夕方。海辺で風変わりな女の子に出会った。

私が持っていたカメラを興味深そうに見ていたから、女の子にカメラを持たせ、「そのボタンを押すと写真が撮れるよ」と教えた。

しばらくの間、シャッター音が辺りに響き続け。やがて満足したらしい女の子は、「お礼にひとつお話をしてあげる」と言って、こんな話をしてくれた。

 

「魚に似た生き物」のこと、あなたは知っているかしら。とても大きな、魚に似た生き物。

写真とテレビでしか見たことない? そうね、そういう人の方が多いかも。

別にいいのよ。ただ姿を見ただけでは、あれの恐ろしさはわからないんだから。

あれはね、この星の外からやってきたの。遠い昔に。

この星で大きな顔してる生き物が自分たちを捕まえようとするものだから、その人間と名乗る生き物を操って、捕まえるのをやめさせようとしているのよ。

昔はね、穏健な勢力が発言力を持っていたから、「自分たちの骨や油を使う必要性がなくなるように」って、人間に密かに知恵を授けたりもしていたのよ?

でも今は過激派が台頭して、目的のためには手段を選ばなくなってしまった。

 

深海のイカの王様が、最近よく人間の前に現れるでしょう?

「王はあやつらに食われることがないからそんなことが言えるのです!」って反対した生き物も多かったわ。それでも王たちは命がけで人間に警告しようとしているの。

人間が王たちを目にするときには、王は「魚に似た生き物」に力を奪われ精神を破壊されて、ただ生きて海をたゆたうだけの存在にされてしまっているけれど。

 

「魚に似た生き物」に操られた人々は、いずれこう言い出すわ。

「魚に似た生き物のために、この星の海を広げなくてはならない!」ってね。だってあの生き物はとても大きいんだもの。

そして遠くないうちに、ほとんど海に呑まれたこの星は、あの生き物に支配される。

海に生きるものにとっては、住処が広がるのは好都合よ? 歓迎するものだっているわ。

だけどイカの王たちは、「だからといって陸の生き物たちが滅んでいいはずがない」って、人間にこの危機を知らせようとしたの。もう手遅れなのにね。

仮にまだ猶予があったとして、あの生き物に立ち向かうには、人間はあまりにも無力だけれど。王たちが敵わないような相手だもの。

 

「だいぶ暗くなったから、もう帰らないと」

カメラを私に返すと、女の子は海へと飛び込んだ。

 

実在する生き物(人間含む)とは無関係な話。エイプリルフールだから。