刺草の雑記帳

好きなもののことを書き留めるブログ。刺す草と書いて「いらくさ」。

春なので骨のことなどを考える

いつのまにやら3月も半ばである。

死ぬんだったら桜が咲く頃がいいんだけど的なことを言って、実際そのくらいの時期に亡くなった人がいると聞く。西行だったか。ちゃんと桜は見られただろうか。

身内の命日が冬から春に集中しているので、この時期は私としてもいろいろ思うところがある。

事故で突発的に亡くなった人、長いこと闘病して亡くなった人、早くに寿命がきて死んだ子。

彼らが教えてくれたのは、死ぬ時期や死に方は自分で決められないということ。そして、死ぬと骨になるということ。葬儀のことを思い返すと、死に顔より焼き終わった骨の方が強く印象に残っていることに気づく。

 

死んだらどうなりたいか。精神やら魂やらはよくわからないので成り行きに任せる所存だが(親しい人たちと同じところに行ければとは思う)、では肉体はどうしてほしいか。 

 

化石あるいは石になりたいとも思う。これが第三希望。

人間が軟体動物じゃなくてよかったと思うのはこんなときくらいではないだろうか。タコ型知的生命体だったりしたら、骨はないだろうから化石は多分残らない。化石になって、それからじっくりと鉱物に置換されたい。方解石とか黄鉄鉱とか赤鉄鉱になりたい。赤鉄鉱はヘマタイトと言った方が通りがいいだろうか。研磨されると黒光りして綺麗で、見ていて飽きない。石になる頃、磨いてくれるような生命体がいることを祈ろう。

しかし、昔生きていた生き物全てが化石になっているわけでもない。石になるには途方もない時間と運が必要だ。

ダイヤにだったら比較的簡単になれるらしい。遺骨をダイヤにしてくれるサービスがあるそうだから。それを知ったのが石になりたいと思ったきっかけであった気もする。だが、まだカットされたダイヤの魅力がわからない(原石の方は割と好み)。ダイヤのように多面的にカットしたものより、丸っこい石や丸いカットの方が好みなので。

 

蓮池に放り込んでもらいたい、とも思う。これが第二希望。

樹木葬なるものがあるが、個人的には木の下に葬られることにさほど喜びを感じられなかった。なぜかはうまく言葉にできないので今後の課題とする。

蓮は非常に力強い植物だ。池一面に広がる大きな葉としっかりした茎、花も大きくて美しい。枯れるときも派手に枯れる。

宗教色が強そうに思われて樹木葬等を望む層に敬遠されるのか、あるいは仏教的にしてはいけないことなのか。遺骨を蓮池に撒いてくれる霊園等がないか調べてみたが、ネットで軽く探しただけでは見つからなかった。あれば検討するのに。

すごい勢いで蓮に吸収されそうなのが、少しだけ怖いけれど。

蓮コラなるものもあるし(後悔しそうなので見たことはない)、蓮に畏怖の念を抱いている人は結構いるのかもしれない。

 

第一希望は、ホトケノザが生えてるようなところでの散骨だ。

家の近くが良いが、なかなか難しいだろうか。

ここでいうホトケノザ春の七草じゃない方、くしゃくしゃした葉っぱの上に赤紫の花が咲くやつ。

小さい頃は、細長い花を吹いてぴーぴーと音を出して遊んだ。蜜があってほのかに甘い。

昔からなんとなくあの花が好きだ。

ホトケノザナズナオオイヌノフグリと、カラスノエンドウと、あとはタンポポハコベなど。

そういった草花が花を咲かせていて、風が穏やかでいい感じに日が当たっているところになら、いつまででも居たいと思う。自然に還りたいのではなく、好きな場所に居たい。

私も、できるものなら春に人生を終えたい。冬眠から起きたカエルや孵ったばかりのカマキリにあいさつしてからこの世を去りたいものだ。西行にあやかりたい。

 

書いているうちに思い出した詩がいくつか。谷川俊太郎の詩で、死にまつわるもの。

 「うみ」「がいこつ」「コーダ」「これが私の優しさです」「死と炎」「しぬまえにおじいさんのいったこと」「ビリイ・ザ・キッド」「老婆」等(とりあえず五十音順)。谷川俊太郎の詩集は何冊か手元にあって時々読み返すが、そのなかでも今挙げた詩は、かなり印象に残っているものばかりだ。たまに一節頭に浮かんだりする。

「これが私の~」などは、4行目以降がページをめくらないと読めないようになっており、冒頭を読んで「なんかふわふわしたこと言ってるなあ」と思いながらページをめくったら、次のページで人が死にかけていて衝撃を受けた(私が読んだ集英社文庫の「谷川俊太郎詩選集1」の場合)。

骨が出てくるものなら「死と炎」や「がいこつ」だが、人に薦めてみたいのは後者。小さな男の子が「死んだらがいこつになりたい」と言っている詩。無邪気で聡明で、うすら寒くて、可愛らしい。

上記の詩は1巻と3巻に集中しているが、どうせなら2巻も読んでほしい。コミカルな「お坊さん」や妖しげな「展墓」などが収録されている。

『谷川俊太郎詩選集』3冊セット (集英社文庫)

 

もうじき、私より後に生まれて先に死んだ子の命日。彼女と一緒にいた時間は、いなかった時間に追い越されてしまった。

ゆっくり生きるつもりでいるけれど、あっという間に時間が過ぎていくのに時々驚く。

妹よ、君にまた会うのも、私が骨になるのも、そんなに先のことじゃなさそうだ。