千葉のとある片田舎の長所
今週のお題「僕の住む街・私の地元」
千葉県の太平洋側の片田舎に住んでいる。生まれ育った土地だ。
辺りを見渡せば田畑ばかり。九十九里平野だから平地が続く。人家はまばら。
のどかというにはひと気がなく、わびしさを感じる光景。
一応、農業や観光などの産業はあるが、千葉県の太平洋沿いの土地ならだいたいそうだろう。温暖で海あるし。
農業については、年に数日だけ親戚の家で種まきや収穫の手伝いをするけれど、観光資源とはあまり縁のない生活をしている。海は近いが、泳ぎに行ったことはほとんどないし、私の生活圏の外にあるものだ。
海と温暖な気候は、かつては人間が住まいを決めるとき重要なポイントだっただろうが、交通の便とか職とか店とか、現代人が必要とするものがこの土地にはやや乏しい。
車に乗れない、車持ってない人間が暮らすにはいささかハード。しかし実家を出るほど金銭的余裕はない。
それでもこの土地の、特に私の住んでいる地域の長所を挙げるとするなら、「鳥がたくさん見られること」だと思う。私にとっては結構重要なことである。
まず、静かなところだから鳥の声がよく響く。もっとも、冬以外の時期はカエルや鳴く虫たちもいるから割とにぎやか。
今の時期に散歩すると、ちちちち、とか、ちゅちちち、とか、鳥のさえずりだけが聞こえるときがある。わびしい気はするが、あれはあれでいいものである。
そして、鳥害にあまり悩まされずに、身近にいる鳥を見て楽しめる。
庭の木の実を食い散らかしてフンも落としていく奴がいるし、カラスはゴミを荒らすし、川にはカワウがだいぶ増えてしまったようだけど。
それでも、鳥が人に追われず住める場所が、このあたりには少なくない。
畑や人家のそばでは、スズメやツバメ、セキレイ、ヒバリ、ヒヨドリ、ムクドリ、キジ、カラス。子供の頃は、大きな木が残っている辺りにアオバズクも来ていた。今もそれっぽい鳴き声は聞こえるので、多分来てる。
田んぼにはカモやシラサギ、ゴイサギ、アオサギ。用水路のそばでは何度かカワセミも見かけた。稲を植えてから収穫までの間は、サギ類とカモがよく田んぼに出没するので、米農家でもないのに田んぼの様子が気にかかる。
珍しい鳥はいないが、鳥がそのへんをちょこちょこ歩いたり飛んだりしているのを見ると、なんとなく心が躍る。
正直なところ、通勤の問題さえ解決できれば、私が別の土地に移る理由は特にない。ないものはよそに求めればいいのだから。
静かで、だけど生き物の声でにぎやか。稲が青々と茂りやがて金色に色づくのも、川がゆったりと海に注がれていくのも見られる。
20数年住んで思う。ここは結構いいところだと。